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筧さんが立派だった…『ミス・サイゴン』(フェスティバルホール)

ミュージカル『ミス・サイゴン』を見に、フェスティバルホールへ。

市村正親さん見たさ、聴きたさでチケットを友人に取ってもらったのだが、その後、病気降板され、代役は筧利夫さんと発表された。
正直、相当がっかり。
…しかし、観劇後の感想としては、
「筧さんが見られてよかった!」
である。

本日、千秋楽のキャストは
エンジニア:筧利夫
キム:昆夏美
クリス:原田優一
ジョン:上原理生
エレン:木村花代
トゥイ:神田恭平
ジジ:池谷祐子

このキャストの中で、いちばん際立った「舞台人の身体」を持っているのが、筧さんだった。
立ち姿、キレのある動き、口跡のよさ、華。
そして「歌」は、ミュージカルではセリフの役割も担うわけだが、その意味では群を抜いていたと思う。
また、アンコールにこたえる姿から、急な代役だったにもかかわらず、見事に「座長」の役割をも果たしてきたことが伝わってきた。

オペラ「蝶々夫人」を素材としたミュージカルであり、蝶々夫人とピンカートンに当たるのがキムとクリスであるが、この二人は残念な出来だった。

キムは、歌詞の大半が聞き取れない。なぜ聞き取れないんだろうと思って、歌を注意して聴いてみると、子音の発音が弱い。また、これほど、なんと歌っているかわからないというのは、母音の発音もよくないんだと思う。キムの歌詞が聞き取れないせいで、ストーリーが非常に追いづらかった。日本語を日本語として美しく響かせて歌えるよう、藍川由美さんに教わったらどうだろう。
それから、なぜ、ある音域から、あんなにのどで力任せに、いかにもミュージカルというクセをつけて、歌うんだろう?
セリフも、絶叫調になると、何を言っているかわからなくなり、こときれるときの最後のセリフも、結局、なんと言ったのかわからなかった。
立ち姿も猫背気味で、舞台映えしない。トゥイに拳銃を向けているときの腕にも力がまったくみなぎっていなくて、緊迫感がない。

(キムの役って、1幕は家族を失ったかわいそうで可憐な少女、2幕は母として強くなった女性、という劇的な変化も見せてほしいところだが、そういうことを望む以前の問題…。)

クリスは、一幕はとくに、出だしの音を外しがちだった。
この話のなかでは、王子様的立ち位置にかかわらず、華がない。姿勢が美しくなく、女性を抱き寄せるシーンで腰がひけているのは、なんだかなぁ。

ジョンとトゥイは、歌がうまく、非常に感心した。
(観ているときは、キムが親の決めた婚約者のトゥイを、なぜあそこまで嫌うのかわからなかったが、どうやら、キムの両親の命を奪ったベトコン側についているからのようだ。)

演出と舞台装置と衣装は、わたしは、あまりよくないと思った。
ストーリーが追えなかったのは、キムの歌が聞き取れないからというのもあるが、演出と舞台装置のせいもある。たとえば、一幕のキャバレーはサイゴンで、二幕はバンコクだけど、差がないから気づかず、なんだか歌でところどころ「バンコク」「バンコク」と聞こえてくるから、ああ、サイゴンじゃなくてバンコクに移ったのか、と。

それから、「1975年4月、アメリカの援助を受ける南ベトナム軍が防御する首都サイゴンに、共産主義の北ベトナム軍が猛然と攻めこんできている」ぐらいのことは、一幕の最初にスクリーンに説明文を映しだしてもいいんじゃないかと思う。

サイゴン、アメリカ、バンコクが出てくるけど、それとはっきりわからせないから、クリスがアメリカの寝室でうなされているシーン、キムとクリスがなんらかの事情ではぐれたことは推察できたけど、そのあとクリスが『地獄の黙示録』のカーツ大佐みたいにベトナムの奥地に自分の王国でも築いて、そこで寝ているのかと思った(^_^;)

衣装も、いわゆる舞台衣装以外の、ポロシャツやダークスーツなどが、量販店で調達したような感じで、70年代後半のアメリカ人という感じはしなかった。
(身体つきだって、どうしたってアメリカ人ではないわけで。その点、宝塚歌劇って、身体の見せ方も衣装も、見事だと思う。)

ヘリコプターも、音はバリバリ響き渡らせていたけど、そんなにすごいかなぁと。まぁ、3階席だったから、近くで見たら、あんな大きなヘリコプターが降りてきてスゴイ!となったのかもしれないが。

…と、文句をタラタラ並べたが、筧利夫さんの「舞台人の身体」には驚かされ、全体的には満足で、また機会があれば、もう少し小さい劇場で、筧さんの舞台が観られたらなぁと思ったのだった。

芝居のあとは、三宮に出て、魚料理の「みやもと 本店」へ。
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つきだし。アナゴ握り、ホロッとしておいしかった〜(つきだしから手をかけておいしいところって、安心していただけると思ったら、やはり、そうだった)。
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炒りぎんなん。
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焼きアスパラ。
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ハモと松茸のホイル焼き。
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野菜の天ぷら。
ここは、再訪したい。

このあと「エクロール」に行ってしまい、泡・白・赤と飲んで、おいしかったけど、フラフラで帰宅(われながら、学習しない…)。
by boyo1967 | 2014-09-18 23:02 | 映画・演劇・舞台 | Comments(0)