人気ブログランキング | 話題のタグを見る

フィムファールム(7)

「フィムファールムが欲しいんです」鍛冶屋は言います。
「魚たちの結婚式を邪魔しようというんなら、この鈍くさい奴め…」
「そんなことしたくありません、フィムファールムが欲しいんですよ」、そして鍛冶屋は、ふたたび事情を説明するのでした。
「そんなもの、知らんなぁ」チョフタンは言います、「あるというのなら、オレだって興味がある」
「悪魔どもは知っているのでは、それがどんなものか」鍛冶屋が言います。
「あ、そうだ、悪魔と言えばあの悪魔、お前さん、一人知っているじゃないか、ヤツに尋ねろよ!」
「どこにいるんでしょう?」
「今日が金曜日なら、“お化け水車”の小屋で、当直勤務の幽霊どもと、カードでマリアーシュ・ゲームをしているよ」

その日は金曜日でしたから、鍛冶屋はそこで、例の悪魔を見つけました。
挨拶もそこそこに、すぐさま、自分が手に入れなければならないもののことを説明しました。
「フィムファールムか」悪魔は言います、「渡すことはできる。
だが、タダじゃない。
フィムファールムと引き換えに、悪人三人の魂をくれ、それでいいか?
サンプル三体、地獄の展示に必要なのさ」
「そんなに大勢、悪い人間を知りませんよ」鍛冶屋は答えます。
「お前は『夢見る理想主義者』だからな。
オレがそいつらをいただくよ、お前さんがそれとわかったときに。
それでいいか?」
「かまいません」
「さて、こいつがフィムファールムだ」悪魔はそう言うと、ゴム製の長靴から小枝を抜き出してきました。極細のムチより毛の分ほど細いものです。
すぐに続けて、こう言いました。
「これは世界にたった一つしかない、すなわち、唯一無二のものだ!
これでひとたびムチ打てば、動いているものはすべて、固まり、像になったかのように動かなくなる。
もう一度ムチ打たないかぎり、動くことはない。
さあ、家に走って帰り、こっそり居間の上の屋根裏に忍びこめ。
ああ、銃は森に置いていくんだぞ!
家には持って帰るな!
お前のライフル銃をぶっ放す音が聞こえたら、ふし穴から下の居間を覗きこめ。
そうすれば、オレが思うに、フィムファールムをすぐにでも試すことができるだろう」
そこまで言うと、悪魔は水車小屋へと消えていきました。

by boyo1967 | 2018-06-03 23:11 | チェコ・中欧・スラヴ | Comments(0)