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英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマ『くるみ割り人形』(TOHOシネマズ 西宮OS)

『不思議の国のアリス』に続き、英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/18のロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』を観に行く。
バレエ『くるみ割り人形』といえばクリスマスシーズンに上演されるもの、最初は
「1月に観るなんて」
と思っていたが、(ブログに書き損ねていたけど)12月に、ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2017-2018でボリショイ・バレエの、その後のテレビ放映でマリインスキー・バレエの『くるみ割り人形』を観たので、どう違うのかを確かめたくなったのと、また、スティーヴン・マックレーが王子を演じるとのことで、観に行くことにした。

TOHOシネマズ 西宮OSの座席は、本当に快適。
とくに先週、狭苦しい大阪松竹座の座席で3時間過ごしただけに、快適さがいっそう際立つ(松竹も、そろそろ、観劇環境の向上に取り組むべきでは)。

英国ロイヤル・バレエの『くるみ割り人形』は、ピーター・ライトの振付。
これが、すばらしかった。
魔術師ドロッセルマイヤーが物語を駆動させていくのだが、これにより、クララとくるみ割り人形との第1幕も、お菓子の国へ旅立つ第2幕とがきちんと結びつき、ラストもよかった。
また、ボリショイ・バレエよりもマリインスキー・バレエよりも、チャイコフスキーの音楽の音を拾った振付になっていたと思う。
(ピーター・ライト版『くるみ割り人形』の、物語を駆動させていくドロッセルマイヤーは、演出家・振付家としてバレエ作品を駆動させていくピーター・ライトその人ではないかと感じた。だから、ああいう大きな役になったのかなと。)

ダンサーのスタイルと踊りの超絶技巧では、ボリショイ・バレエに軍配が上がる(主役ペアや踊る人形、各国の踊りなど、見せ場の連続。旧ソ連時代の演出で、新味はない)。
マリインスキー・バレエも同様にダンサーのスタイルはすばらしく、でもボリショイ・バレエほど超絶技巧ではない。が、衣裳や舞台美術などは、より洗練されている。

英国ロイヤル・バレエは、日本人バレエダンサーのスタイルを6(日本人一般を3として)、ロシア人バレエダンサーを10以上とすると、所属バレエダンサーのスタイルは7〜8ぐらいの人が多いかなと思う(もちろんロシア出身のダンサーも多くいるので、そういう人は抜群のスタイルなわけだが)。
が、演出の細やかさ、芝居のうまさ、細部まで手を抜かないという点で、この1カ月に観た3本の『くるみ割り人形』のなかでは、英国ロイヤル・バレエのものが、わたしには最高だった(ネズミと人形との戦いのシーンで、ネズミも人形もそれぞれ、倒れた兵士を運び出す演出の細かさ)。
バレエはスタイルだけじゃないのね、と思わされた。

スティーヴン・マックレーって、ああいう王子役もできるのね(『くるみ割り人形』振付には2系列…グラン・パ・ド・ドゥをクララ自身が踊るものと、クララが見るものと…あり、英国ロイヤル・バレエは後者で、スティーヴン・マックレーは「くるみ割り人形からの王子様」ではなく、「お菓子の国の王子」として踊った)。
スティーヴン・マックレーの相手役の「こんぺいとうの精」はサラ・ラム。初めて観たけど、片足で立ってピタッと止まるの初め、踊りがすばらしい!
幕間のインタビューで、こんぺいとうの精を初演時に務めたコーチの指導を受けて、練習を重ねたのが、よくわかったし、パ・ド・ドゥの最後のほうは足の感覚も手の感覚も薄れてくるほど肉体的に苛酷とのこと、そうしてあの美しい踊りが見られるのだと思うと、バレエダンサーには感謝しかない。

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ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』(英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2,017/18)
【振付】ピーター・ライト
【音楽】ピョートル・チャイコフスキー
【指揮】バリー・ワーズワース
【出演】フランチェスカ・ヘイワード(クララ)、サラ・ラム(こんぺいとうの精)、ギャリー・エイヴィス(ドロッセルマイヤー)、スティーヴン・マックレー(王子)、アレクサンダー・キャンベル(ハンス・ピーター/くるみ割り人形)
ロンドン公演日:2017年12月5日

ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2017-2018『くるみ割り人形』
【振付】ユーリー・グリゴローヴィチ
【原典振付】マリウス・プティパ
【音楽指揮】パヴェル・クリニチェフ
【キャスト】マリー/アンナ・ニクーリナ くるみ割り人形/デニス・ロヂキン ドロッセルマイヤー/アンドレイ・メルクーリエフ ネズミの王/ヴィタリー・ビクチミロフ ボリショイバレエ団コール・ド・バレエ
【監督】ヴァンサン・バタイヨン
モスクワ公演日:2014年12月21日


by boyo1967 | 2018-01-20 23:39 | 映画・演劇・舞台 | Comments(0)