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『犬ヶ島』(シネ・リーブル神戸)

ウェス・アンダーソン監督『犬ヶ島』をシネ・リーブル神戸に観に行く。
『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年アメリカ)の、華やかなのに静謐な画面が印象的だった。今度の作品はストップモーションアニメ(コマ撮りアニメーション)だという。

20年後の日本、雲丹(うに)県メガ崎市が舞台、小林アタリ少年が“犬ヶ島”に追放された、自分の護衛犬のスポッツを救出に行く話。
「ヘンな日本」てんこ盛りなんだけど、アニメのせいか、そう気にならない。
しかも、ヘンなんだけど、音楽とか、妙にばっちりとはまっている。
これをコンピュータグラフィックスをほとんど使わず、コマ撮りでつくったって、すごい。

アニメのよしあしというのは、わたしはわからない。
たとえば、犬を、ある民族や、排斥される外国人集団や、「ドッグ病」をAIDSの例えとして、読み替えて観ることも可能だろうけど、「犬がいちばん大好きな年頃である12歳の少年と、その愛犬の話」として、ただ楽しんだ。

ともかく、見たこともない国ひとつ、街ひとつ、島ひとつをつくり上げた創造性はすごいと思う。
(最近のアニメの、写真だか映像だかをそのまま転換しただけのような、街や自然の画面は、おもしろくもなんともない。)
あと、声優のキャスティングのセンスもすばらしい(アタリを演じたコーユー・ランキンの、ネイティブのものだけど、微妙にたどたどしさがあり、そして少年特有の高潔さに満ちた日本語、ぱっと耳にするだけで美女であることがわかるスカーレット・ヨハンソン、出番は少ないながら優秀な医師の渡辺謙、etc.)。

(2018年6月1日付「朝日新聞」夕刊掲載の、「瓦礫の前で呆然と立ち尽くすしかなかった我々日本人への、アンダーソンのひそやかな応援歌なのである」と締めくくられる柳下毅一郎さんの映画評は、ほかの映画評とは違うまなざしで、よかった。)
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映画のあとは、「さかばやし」で鰆のしゃぶしゃぶ、穴子と丹波・婦木(ふき)農場の野菜の天ぷら、おそばと日本酒を楽しんだ。

by boyo1967 | 2018-05-27 23:47 | 映画・演劇・舞台 | Comments(0)