英国ロイヤルバレエ『バーンスタイン・センテナリー』をTOHOシネマズ西宮OSへ観に行く。
「コンテンポラリーダンスはちょっと」と、当初は観に行くつもりはなかったが、評判がよさそうなので。
結果からいうと、観に行ってよかった。
バレエもいいんだけど、インタビューが充実しているのが、価値がある(その点、ボリショイ・バレエのシネマは、やや雑で残念)。
〈幽玄 Yugen〉
【振付】ウェイン・マクレガー 【指揮】クン・ケセルス
「バーンスタイン・センテナリー」とは、指揮者・作曲家として有名なバーンスタインの生誕100年を記念してつくられたバレエ作品のトリプル・ビル(「3本立て興行」の意味らしい)。
この「幽玄」の使用曲は、「チチェスター詩篇」(バーンスタイン指揮、イスラエル・フィルのを貼ってみる)。
ボーイソプラノの声が救済の響きのように流れるところなど、去年観た「ミサ」を思わせる。
男性も女性も、同じ形に見える、赤いノースリーブシャツにゆったりしたサルエルパンツという衣裳を身につけ、同じ衣裳を身につけることで却って、身体の男性らしさ、女性らしさが、いい意味で浮かび上がる。
インタビューでは確か「若者の通過儀礼がテーマ」と話していたと思うが、幕切れはそのようだったし、同時に、楽譜を赤い音符が跳びはねるようにも見え、何か「美しさそのもの」であるようにも見えた。
サラ・ラムが美しい。フェデリコ・ボネッリもやはり、すばらしいダンサー。
その他のダンサーたちもとてもよかったので、自分の勉強のため、ロイヤル・バレエの公式サイト掲載の顔写真を使わせていただき、合わせてダンサーとしての階級も書き出してみた。
ウィリアム・ブレイスウェルは、これからどんどん、出演が増えていくかもしれない。
ハリー・チャーチーズも印象的。
【出演】
フェデリコ・ボネッリ Federico Bonelli プリンシパル
ウィリアム・ブレイスウェル William Bracewell ソリスト
ハリー・チャーチーズ Harry Churches アーティスト
メリッサ・ハミルトン Melissa Hamilton ファーストソリスト
フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward プリンシパル
桂千里(ちさと) アーティスト
ポール・ケイ Paul Kay ソリスト
サラ・ラム Sarah Lamb プリンシパル
カルヴァン・リチャードソン Calvin Richardson ファーストアーティスト
ジョセフ・シセンズ Joseph Sissens アーティスト
高田茜 プリンシパル
〈不安の時代 The Age of Anxiety〉
【振付】リアム・スカーレット 【指揮】バリー・ワーズワース
使用曲は、交響曲第2番「不安の時代」。
ニューヨークのバーとホテルの室内を舞台にした(どちらも舞台装置が、映画でも使えそうなほどつくりこまれていて、すばらしい)、昔のハリウッド映画の一場面のような、洒落た作品。
サラ・ラムが、まるで昔のハリウッドの美人女優のようで、「幽玄」とは違うおもむきの美しさを見せる(ハイヒールで踊るなんて! トレンチコートもすばらしく似合っていた)。
バーンスタインが抱えていた、宗教と性(的マイノリティ)がテーマのようなことを言っていた(もしかしたら「幽玄」についてだったかもしれないが、バーンスタインと切っても切れないテーマだから、この作品に投影して見ても構わないだろう)が、結局は、宗教的や性的に、マイノリティだろうとマジョリティだろうと、人間は、どうしようもないさびしさを抱えながら生きていくしかない、ホテルのシーンを見て、そんなことを思った。
そして、そんなふうに、寂しさと孤独にひどく打ちひしがれる夜を過ごしても、それでも人には平等に朝が来て、生きていくしかない―そう思わせる、ラストのニューヨークの摩天楼の、希望に満ちた夜明けのシーンだった(このシーン、トリスタン・ダイアーがよかった)。
アレクサンダー・キャンベルは「くるみ割り人形」のときより、今回の役のほうが魅力的に感じた。
ベネット・ガートサイドは、大人の魅力を見せてくれた。
【出演】
サラ・ラム
アレクサンダー・キャンベル Alexander Campbell プリンシパル
ベネット・ガートサイド Bennet Gartside プリンシパル・キャラクターアーティスト
トリスタン・ダイアー Tristan Dyer ソリスト
〈コリュバンテスの遊戯 Corybantic Games〉
【振付】クリストファー・ウィールドン 【指揮】クン・ケセルス
使用曲は、「セレナード」(ヴァイオリン協奏曲)。
「古代ギリシアの第1回オリンピックをイメージした」ということだったけど、この作品は、ちょっと退屈してしまった。
ローレン・カスバートソンと平野亮一のペアがよかった。
マシュー・ボールは、容姿が美しい。
マヤラ・マグリは、ちょっと野性的な感じがすてきだった。
【出演】
マシュー・ボール Matthew Ball ファーストソリスト
ウィリアム・ブレイスウェル
ローレン・カスバートソン Lauren Cuthbertson プリンシパル
ティエニー・ヒープ Tierney Heap ソリスト
平野亮一 プリンシパル
マヤラ・マグリ Mayara Magri ソリスト
マルチェリーノ・サンベ Marcelino Sambé ファーストソリスト
ヤスミン・ナグディ Yasmine Naghdi プリンシパル
ベアトリス・スティックス=ブルネル Beatriz Stix-Brunell ファーストソリスト