8月にフェスティバルホールで、マーシャとウラドの「ドン・キホーテ」を観たのがついこのあいだのように思えるのに、もう早、マリインスキー・バレエの「ドン・キホーテ」。
第1幕のバルセロナの街の広場の場面で、もう心をつかまれてしまった。
群衆が有機的に動いている感じ。すてき。
主役のキトリとバジルを務めるのは、ナデージダ・バトーエワとウラジーミル・シクリャローフ。
容姿もとても美しいし、踊りも申し分ないんだけど、マーシャとウラドの、あの熱量の高い、コンビネーションのよさはないかな…。
それと、スパニッシュダンス風の踊りのとき、マーシャの腕や足や上体のちょっとした使い方がとてもかっこよくて、今回、別のダンサーで見て、やっぱりマーシャはうまかったんだなと、あらためて思った(もしかしたら、ボリショイ・バレエとマリインスキー・バレエの芸風というか、バレエ風の違いによるものかもしれないけど)。
もう一つあらためて思ったのが、ウラジーミル・ラントラートフのリフト、サポートのうまさ。
シクリャローフはワンハンドリフトでひやっとさせられたところがあったし、そういうことがあると、キトリのフィッシュダイブも心配が先に立つ。
とはいえ、それぞれ一人で踊る、バジルのヴァリエーション、キトリのヴァリエーションは、超絶技巧をラクラクと見せてくれた。
シクリャローフのバレエジャンプは見ものだったし、キトリの扇を持ってのヴァリエーションもすばらしかった(回転にはダブルが何度もあった)。
舞台装置、衣裳もすばらしかった。よくぞ、これを持ち運んで東アジアのツアーをしてくれた、と、感謝する。
ドン・キホーテの夢の中の森のシーンの美しかったこと。日本人でマリインスキー・バレエに入団したとして話題になっていた永久メイさんがキューピッドを務め、まさに日本人ばなれした脚の長さに驚いた(非常にかわいらしい雰囲気が、役に非常に合っていた。兵庫県に来る前の東京公演では、膝の痛みのために降板していたそうだが、回復したのだろうか。無理をしたのでなければよいが)。
森の精の女王を務めたマリア・ホーレワは若いダンサーらしいのだけど、とても雰囲気があり、もっと見ていたいと思った。
エスパーダのロマン・ベリャコフ、街の踊り子のエカテリーナ・コンダウーロワは、コンビネーションのよさ、迫力では、主役コンビを食いそうな感じだった。
ベリャコフ、おそろしくスタイルがよい。ロシア人ダンサーはみんなスタイルがいいものだけど、そのなかでも飛び抜けてスタイルがよい。彼も、もっと見たい。
本場での公演では、本物のロバや馬が登場するそうだが、それはなし。
また、第二幕第一場の人形劇のくだりはなく、ジプシーがドン・キホーテの手相占いをしたら、ドン・キホーテが怒り出す、というふうにしていたそうだ。
第二幕第二場の森のシーン、子どもの森の精が登場するそうだが、それもなし。
8月の世界バレエフェスティバルは、プロローグは「床屋のバジルがドン・キホーテの顔をあたっている」だったけど、今回は、ドン・キホーテとサンチョ・パンサが旅に出ることになる、というだけだった。
ドン・キホーテのソスラン・クラエフ、背が高く気品があって、よかった。
サンチョ・パンサのアレクサンドル・フョードロフもすばらしかった。
(東京バレエ団版との違いでいうと、第二幕第一場のジプシーの踊りは「貞子」ではなく、フラメンコ的な振付のかっこいいダンスだった。)
そうそう、オケは、荒っぽくはあったけど、聞かせどころはビシッと締めていた。
パーカッション、かっこいい!(世界バレエフェスティバルのときの東京フィルハーモニー交響楽団のはやはり駄目な部類だったのだと再認識)
金管はちょっとやかましく、ところどころ、やらかしてたかな…(まぁ、彼らの日程を思うと、それも仕方ないかと思う)。
マリインスキー・バレエ「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ(1869年)
改訂振付:アレクサンドル・ゴールスキー(1900年)
舞台装置デザイン:アレクサンドル・ゴロヴィーン、コンスタンチン・コローヴィン
舞台装置復元;ミハイル・シシリアンニコフ
衣裳デザイン:コンスタンチン・コローヴィン
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー管弦楽団
キトリ:ナデージダ・バトーエワ
バジル:ウラジーミル・シクリャローフ
エスパーダ:ロマン・ベリャコフ
街の踊り子:エカテリーナ・コンダウーロワ(アナスタシア・ヤロメンコからキャスト変更)
花売り娘(の1人):石井久美子
森の精の女王:マリア・ホーレワ
キューピッド:永久メイ
(晩ごはんは、阪神芦屋の「をさむ」。おいしかった。)